──谷先生が専門で研究されている「パーソナリティ心理学」とはどのような学問なのでしょうか?本当はこの辺りの話をすると本を1~2冊読むような内容になってしまうのですが……まず心理学では、人の行動パターンのことを「性格」と定義しています。この、ある程度の時間や場面を通した一貫性が認められる行動パターンがどのように作られているのか、パーソナリティの違いによって病気になりやすいなどの傾向があるのか、そういったことを総合的に学ぶのがパーソナリティ心理学です。
よく、世の中は「明るい人」と「暗い人」の2種類に分けられると誤解されるのですが、実際にはそうはいきません。「すごく明るい人」もいれば「すごく暗い人」もいて、かなりグラデーションがあります。また、一度の行動で性格を判定するのではなく、ある程度行動を見て測定していきます。
──「性格」というのはアウトプットとして表れるものなのですね。そうですね。もちろん心の中にはいろいろなものが渦巻いていると思うのですが、基本的には行動パターンですよね。動物を見ていると、彼らは喋らないけれどそれぞれ個性がありますよね。よく鳴く猫もいれば鳴かない猫もいる。探索範囲が広い動物もいれば狭い動物もいる。こういったものが行動パターンだと考えると分かりやすいと思います。
──それを測定するのが心理尺度で、「OCEANパーソナリティ診断」で用いたビッグファイブ理論もその1つということですね。そういうことです。心理尺度とは物差しのようなもので、測定をするときには心理検査を行います。質問をしたり、絵を描いたりして測定するものがありますね。
ちなみに、パーソナリティ心理学には、どうやって測定するのか、いくつの物差しを使うのかといったものを研究する基礎研究と、実際に働く現場などでどう役立てるかというのを研究する応用研究があります。応用研究は教科書などにはほとんど載っていないのですが、実際にはさまざまな分野で研究されています。以前、ある教育機関と学習スタイルと性格の関係について共同研究を行ったことがあります。ビッグファイブ理論の外向性の因子でいうと、外向的な子どもはグループディスカッションを好み、内向的な子どもは静かな場所で落ち着いて勉強するのを好む傾向があることが分かりました。教育機関はその結果をもとに、子どもに適した学習スタイルをアドバイスしていたようです。