OCEANパーソナリティ診断を監修! 心理学博士 谷伊織先生に聞く MBTI診断にも注目!診断結果のとらえ方・活かし方

更新日:2024/7/19 

2024年3月にライトアップが公開した「OCEANパーソナリティ診断」の監修としてご協力いただいた愛知学院大学 心理学部心理学科 准教授 谷 伊織先生に、パーソナリティ心理学やビッグファイブ理論についてお話を伺いました。

前編では、パーソナリティ心理学の基本や年齢による変化などについてお伺いしました。
後編では、マーケティングでの心理学の活かし方や、世界的に流行するMBTI診断についてお話を伺っていきます。

INDEX
性格傾向をマーケティングに活かすには
人前での性格を装っても本質的な性格は変わらない
世界的に流行しているMBTI診断が、いじめや差別の温床になりつつある
診断の精度が高いほど結果が偏るというジレンマ

性格傾向をマーケティングに活かすには


──性格傾向に合わせて商品を提案する、というようなマーケティングはできるのでしょうか。



そうですね。外向性が高い人に対して、外向性が高い人が好みそうな商品を提案するなど、性格特性を活用した施策は可能だと思います。性格特性に年齢を組み合わせて、「40代の女性で外向性が高い人には、この商品を提案する」というような話も不可能ではありません。消費者としても、自分に合った商品が見つけやすくなるので助かるかもしれませんね。

──これまで年齢や性別で分類していたターゲット設定が、より細かくできるということですね。

例えばなのですが、ロックミュージシャン、特にヘビメタ系は神経症傾向が高い傾向があるんです。彼らのSNSをフォローしている人も神経症傾向が少し高い傾向があるといわれています。ですから、そのミュージシャンに広告をお願いするなら、神経症傾向が高い人が好みそうな商品や宣伝文句を取り上げるとフォロワーに響きやすいわけです。

──ターゲット層の性格特性に合わせて、商品のデザインを考えたり、プロモーションの展開を考えたりすることもできるかもしれませんね。パーソナリティ心理学のマーケティング活用には、いろいろな可能性がありそうです。

人前での性格を装っても本質的な性格は変わらない


──社会的な性格と、1人でいるときの性格は別のものとして考えたほうがいいのでしょうか。

社会的な立場などで行動を変えるのは当たり前のことですよね。でも「自主的に行動したい」というような行動パターンはそんなに変わらないはず。一時的な仮面を被っているような感じですね。

──性格の使い分けがあるとすると、例えばビッグファイブ理論を用いた適職診断で、会社で装っている自分の適職が出るのでしょうか。

どこまで装っているのかというところですよね。タレントなど人に見られる仕事は完全に装いモードだと思います。俳優が役を演じるのと一緒ですよね。ただ普通の人が会社で働くときにそこまで装うとすると、かなり負担がかかります。内向的な人が外向的に振る舞うのは無理をすることになるので、一般の人であればそこまで装わないのではないかと思いますよ。

──会社ではテキパキしている人が、家ではすごく雑でダラダラしてしまうというパターンもあるかと思います。ビッグファイブの勤勉性はどう現れるのでしょうか?

家でズボラでも、会社ではルーズではなく遅刻もせずにきっちりしている人は勤勉性が高い人です。家でいくらルーズでも、何もルールを破ってないですからね。むしろ「家ではだらけていい」というルールが自分の中にある。それはすごく勤勉ですよ。

勤勉であるというのは仕事で勤勉かどうかということなので、家で勤勉じゃなくても問題ないですよ。勤勉性を見るのであれば、仕事だけ見ればいいんです。家は仕事じゃないですからね。ただ締め切りが守れない、仕事なのに遅れてくるという場合は、勤勉性が低い人ですよね。

世界的に流行しているMBTI診断が、いじめや差別の温床になりつつある


──今、世界的にMBTI診断が流行しています。この流行について、どのようにお考えでしょうか。


もともとMBTIは、ユングが提唱した心理学的類型に基づく性格検査です。今流行している16タイプに分類する性格診断はMBTIを脚色したもので、科学的根拠や正当性はありません。最初に「MBTIだ」と言っていたので、MBTIとして認識されてしまった。本当はMBTIにも著作権があるのですが、MBTIにそっくりなフィードバックを作ってあたかもMBTIのように見せるのは結構悪質ですよね。日本MBTI協会でも警鐘を鳴らしています。

──「私はこの性格」と自己紹介ツールのようにMBTIを認識している人も多いですよね。

いつまでこれが続くのだろうとは思いますよね。ただ、悪いものはいずれ廃れるというのが宿命ですので、いつかは終わるだろうと予想しています。でもなくなったらまた新しいものが出てきて流行ると思います。

昔からそういうのってたくさんあるんですよ。血液型診断や右脳型・左脳型とか……科学的根拠や裏付けがないものは、大きな枠組みで「疑似科学」という扱いになります。血液型診断はもともと心理学で研究されていたものではあるのですが、あとからこれはダメだと撤回されたんです。でも面白いと世間で流行ってしまう。そうするとなかなか止められないですよね。

韓国では日本よりはるかにこの偽MBTIが流行っています。MBTIを重視して再婚相手を選ぶ女性が30%以上いるとか、バイトの募集要項にMBTIのこのタイプは応募しないくださいと書かれているとか、もうかなり差別的ですよね。友人や結婚相手を選ぶときにMBTIを使うという若い人も多くいます。採用場面でもMBTIの記入欄を設けている企業が一定数いて、人事に使っていると。日本でも「嫌われるMBTIランキング」みたいなものが登場していて、いじめや差別の新しい温床にならないかと心配です。韓国の有名な科学者がこのMBTIは科学的に検証されたものではないと否定したのですが、いまだに廃れる様子がありません。

──アメリカの学生がMBTIの性格タイプが書かれたTシャツを着ているのも見ました。それがコミュニケーションのきっかけになればいいですけど、それでも人間関係に弊害が出る場合もありますよね。

「面白い」で止まればいいんですよ。最初のトークで止まればいいけど、「あいつは◯◯タイプだから付き合わないでおこう」となると、これはダメですよね。そこに壁があると思います。

──自己分析に役立てたいのなら、ビッグファイブ理論などを用いたちゃんとした性格診断をやったほうがいいということですよね。

ビッグファイブのほうが新しくてまだマシですよね。実は本来のMBTI自体も、1960年代頃に作られたかなり古いものなので測定の精度が低く、妥当性や信頼性も低い。心理学の世界の中では廃れていったものなんです。
統計学も進歩していますから、これからさらに発展していくと、また20年後くらいに別の理論が登場してもおかしくはありません。だからビッグファイブもあくまで現時点ではこれがベターだということです。

診断の精度が高いほど結果が偏るというジレンマ


──今回制作した「OCEANパーソナリティ診断」と、他の性格診断の一番の違いはどういったところでしょうか。

OCEANパーソナリティ診断

心理学のスタンダードな作り方をしているというのは大きいと思います。インターネット上にあふれている無料の性格診断のほとんどは、事前調査も検証も行われていません。それと比べて「OCEANパーソナリティ診断」は、学術的な心理尺度の検証プロセスを踏まえて制作されていますから、測定の精度も高いだろうし、信頼性と妥当性も高いんじゃないかなと思います。ライトアップさんのようなWEBコンテンツ制作会社とこういった診断を作ったのは初めてだったのですが、選んだ項目に忠実に作っていて、解説もちゃんと書けていました。説明も短くて分かりやすかったと思います。

──「OCEANパーソナリティ診断」については、一部で診断結果に偏りが見られ、自分の結果タイプにしっくりきていない様子も見受けられたように思います。精度はもっと上げられるのでしょうか。

実は結果が偏るのは理由があって、例えばタレントが集まってみんなで回答すると、どうしても外向性が高い人が多くなる傾向があります。テレビに出ようとしている時点で、外向性が高い傾向があるのは当然ですよね。当たっているから偏るんです。これがクラシックコンサート会場など他の場所に集まった人が診断すると、違う傾向が見られるはずですよ。

診断の精度が高いからこそ、結果が偏る。でも、性格特性のあらわれ方は生活環境や状況によって異なるので、同タイプでも同じ人格になるわけではありません。「あの人と自分が同じわけがない」と感じると、診断結果も信用できなくなるのはジレンマですけれどね。

「OCEANパーソナリティ診断」は純粋にビッグファイブの因子を問う設問を精選して、妥当性と信頼性が高い結果が得られるように制作されています。今後はもっと結果タイプを細分化するなどして、どんな状況でもみなさんが納得できるように調整していけると良さそうですね。


今回は、谷 伊織先生にパーソナリティ心理学や診断コンテンツの貴重なお話をお伺いできました。
ライトアップでは、ビッグファイブ理論をベースにした心理診断コンテンツの企画制作から、サイト制作までワンストップで対応しています。WEBコンテンツだけでなく、雑誌などの紙面に掲載する診断コンテンツの制作実績も多数あります。
診断コンテンツの制作を検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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お話を伺った人

愛知学院大学
心理学部 心理学科 准教授

谷 伊織 先生

愛知学院大学 谷 伊織 先生

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